BtoBのマーケティング活動において必要不可欠な顧客リード(顧客の情報)。多くの企業が顧客リード獲得のために広告を配信するなか、あえてリードを取らない戦略を採用している企業が、ビジネス向けのクラウドサービスを提供するトヨクモです。
前回に続き、中井康喜氏(トヨクモ マーケティング本部 プロモーショングループ マネージャー)にお話を伺いました。今回は、どのような検索広告の強化施策などを行っているのか紹介します。
質の高いコンテンツ、検索広告の強化などでゴールポイントを増やす
トヨクモは質の高いコンテンツ、顧客起点でのコンテンツを増やしていくことを計画しています。しっかりとコンテンツの基盤を築くことで、たとえば大規模な地震が起きた際など社員の安否確認が必要な時に、トヨクモを選んでもらえるのではないかと思っています。そのためにしっかりと広告を活用して、顧客にトヨクモのコンテンツを届けることが大切だと考えています。
プロモーショングループでは無料お試し(トライアル)の数をKGIにしています。ブランドワードを検索したユーザーはお試しの確度が高いことは言うまでもありません。その上で、検索の強化、その他の広告でもしっかりと配信して、ゴールポイントを増やす施策を行っています。
検索結果なのでブランドワードでは必ず上位表示されていますが、競合他社の広告が自然検索の上に出てしまいます。その防御策としても、しっかり他社の広告の上位にトヨクモの広告を出して、検索してくれたユーザーがきちんと自社サイトに来てくれるように導線を置く必要があると思っています。
検索ワードに応じたコンテンツ作りを意識する
2023年に入ってからは、一般ワードについても強化を始めましたね。
「kintone連携サービス」については仰るとおりです。「安否確認サービス2」は、以前自社運用を行ってた時代から強化していました。
今もこれからも、トヨクモが提供するサービスの対象となるお客さまに「まさに求めていた内容だ!」と思っていただけるようなページを案内することが大切だと思っています。
これは良質なコンテンツ制作の話にも通じることですが、お客さまが入力する検索ワードを把握して、その検索意図に合ったコンテンツを作り、広告でも検索してくれたユーザーにしっかり届けることが重要です。
検索連動型広告では、検索ワードに合ったページを設定するのとしないのとでは、成果に大きな違いが出ます。しかし、すべての検索ワードに合ったページを作成するには手間も費用もかかります。
たとえば、月に数回しか検索されないようなワードに合ったページを作っても、費用対効果が見合わないケースも出てきますよね。
けれど「kintone連携サービス」の場合、よく広告で使用されるようなLPはなくてもコンテンツが充実しているので、一般ワードのLPにコンテンツページを設定することで、より適切な流入導線を作れていると感じています。
このような施策はまだ数か月しか行っていませんが、良質なコンテンツであることを裏付けるように、コンテンツへ流入したユーザーが、そのページ内にあるCTA(コール・トゥ・アクション=他ページへのリンクボタン)をクリックして、資料請求などにつながっています。検索連動型広告とディスプレイ広告の両輪で運用していますが、検索広告からはゴールポイントにも貢献し始めています。
信頼できるチャネルにユーザーが接触する機会を促進
そうですね。一方で「安否確認サービス2」はこれからだと感じています。
「安否確認サービス2」の場合、キーワードの広がりのような、核をついた関連キーワードがあまりない印象です。もちろん、そのなかでもいかに適切なキーワードを見つけてそれを攻略していくのがとても重要だと感じています。
一般ワードはブランドワードと異なり、1回ページに訪れてそのままコンバージョンにつながることは少ない傾向です。そのため、最終的にはブランドワードでコンバージョンしたとしても、その起点を作れるようにしていかなければならないと思っています。
また、信頼性の高いチャネルでの接触を促すことはかなり重要なポイントですので、その要素、アシストの部分を検索連動型広告でも作っていけたらと。
そうですね! 以前、ゴールポイントを増やす目的でキャンペーンなどを行ったのですが、その時は多くのお客さまにサービスを使っていただくことができました。これからも、何かしらのキャンペーン企画も検討していきたいですね。
高品質なコンテンツを作成し、それを広告で拡散して多くの人の流入を促しても、ユーザーメリット、お得感、コンバージョンを決定付けるプラスαの有無で結果が変わることは大いにあります。
キャンペーンやプロモーションについては一緒に考えたり、広告の利用法について議論したりしていきたいですね。一方で「目的を何にするか」「指標をどのように据えるか」ということも大切だと考えています。
広告媒体の数値にとらわれず、「全体の成果を出すために何をすべきか」を考える
2024年、Googleは「Google chrome」でサードパーティcookieを廃止すると発表しており、広告媒体(サードパーティ)の計測が今までのように行えなくなると想定されています。あえて伺いますが、準備などはしていますか?
広告媒体での計測の欠損は、今に始まったことではない認識です。また、私たちはすでに管理画面上のコンバージョン数ではなく、「Google Analytics4(GA4)」や他の計測ツールでゴールポイントを計測し広告成果を見ているので、今後もその方式を継続していきたいです。
私個人の意見として、その取り組みはとても良いと思っていて。
広告媒体に配信料を支払って、広告を掲載しているので、どうしてもその広告媒体で獲得できたコンバージョンの数にのみ目を向けてしまいがちですが、「実際はどうだったのか」という点が重要です。仮に広告媒体でコンバージョン数が増大しても、基幹システム上あるいは実際の問合せや売り上げが伸びていない、という話を聞くことがあります。
そういった違和感をなくす意味でも、自社データと照らし合わせながら広告を配信していくことが重要で、そのためにもトヨクモとしっかりと目線を合わせ、手を組んでいくことが必要不可欠だと考えています。
今のお話は私たちの目的を達成するための「HOW」の1つだと思っているので、「私たちの事業がうまくいくのか」という点を一緒に考えてもらえるのはとても嬉しいです。もちろん、成果につながらないこともありますが、広告だけではなく「全体の成果を出していくために何をしていくのか」が重要だと考えています。
現在、社内でも他部署とのコミュニケーションをとるようにしていて、いわゆるワンチーム、部署ごとの目標達成ではなく会社全体での計画の達成、事業の成長をしっかりと考えるようになってきています。そこにアユダンテさんも入っていますし、これからもお互いに情報を共有しながら同じ方向を見ていきたいですね。
同感です。しっかりと会話しながら、トヨクモの事業目標を達成できる一助になれるよう、頑張りたいと思います。
インタビューを終えて、広告運用者の視点から考えること
リード(顧客情報)に執着せず、自社サービスやコンテンツの質に重きを置いているトヨクモ。新しい戦略はサービスによって成果の差はあれど、ネガティブに捉えることなくブラッシュアップしていくことを考えています。また、顧客中心のお話をしていたことがとても印象深く残っています。
今後、Webの運用型広告は、従来通りに計測できないと想定されています。広告の成果・指標も、過去と比較した良し悪しの判断が難しくなります。そうなると、広告だけの成果ではなく「サイト」「サービス」「企業」という単位でビジネスの成長をしっかりと追う必要があると、私は考えています。
機械学習に必要なデータを広告システム上で十分に測定できない状況のなか、数多くリードを獲得する戦略より、しっかりとアプローチしたいターゲットを見つけていくことを優先するべきではないでしょうか。
そのためには、良質なコンテンツが必要不可欠です。オーガニック検索からの流入はもちろんのこと、検索連動型をはじめとした広告からも流入を促すことができれば、未来の顧客に対してしっかりと印象づけをし、興味を持ってもらうことが可能となります。そして、そのコンテンツの質が高ければ高いほど、余計なセールスを行う必要がなく、顧客になってもらえる可能性も高まるでしょう。
そう考えると広告での配信目的も明確化できるため、成果を高めることに集中できる、とても良いサイクルが回せそうな事例として、トヨクモのBtoB施策の事例を紹介しました。
著者情報
河野 芽久美 アユダンテ株式会社
自動車雑誌のライター、課金コンテンツ制作を経て広告運用の道へ。2015年にアユダンテにJoin。お客様の広告運用やサポートだけでなく、チーム内部のファイナンスを含む業務効率化、職務環境改善にも取り組む。SNS広告の、CV以外の影響を考察することが面白いと感じている今日この頃。得意分野は「求人」「不動産」「総合通販」。趣味は美味しいモノを食べること。
登壇歴:SEM ohenro茶屋 Vol.2 https://shift-web.co.jp/semohenro/