カスタマーエクスペリエンスの向上に役立つと言われ、EC企業の多くが注目するWeb接客ツール。今回は、Web接客ツールの導入編。どのような基準でツールを選ぶくべきかを考えていきましょう。
キャラクターデザイン◎材井千鶴 イラスト◎宮川綾子
自社サイトにピッタリのWeb接客ツールとどう出会う?
質問ですが、サイトにWebツールを導入する際、どのような基準で選びますか?
- 予算内に収まるか
- 機能が充実しているかどうか
- 費用対効果が見込めそうか
- 口コミがよいか
- 営業マンが魅力的 ……etc.
もちろんツールによってさまざまですが、上記のような基準で選定されることが多いのではないでしょうか?
Web接客ツールは近年、認知度が急速に高まっており、iTRの調査では市場規模が50億円に成長。2021年には75億円規模に拡大すると言われています。
さまざまな特徴を持つツールが数多く登場し、ベンダー間の競争も激化しています。
そんな中、何を基準にツールを選定すべきか、ますますわからなくなってきているのではないでしょうか。数あるツールの特徴をすべて把握するのは困難ですが、Web接客ツールの導入前に考えなければならないのは、①ユーザー視点での課題の見極めと②導入後の運用体制の2つです。
① ユーザー視点での課題の見極め
〜課題を見極めて最適なツールを選ぼう
1つ目の選定基準は、「ユーザー視点での課題の見極め」です。
Web接客ツールは「接客」という特性上、ユーザー視点で課題を見極めた上で「どんな接客がしたいのか」「そのためにどんな機能が必要なのか」をイメージする必要があります。
上の図でわかる通り、ユーザーの行動ステップごとに課題を分類しただけでも、見るべき指標や必要な接客は異なります。厳密にはここにユーザー軸や時間軸なども入ってくるので、必然的にさまざまな接客が必要になります。
課題ごとに考える、Web接客の機能
ご自身のサイトで考えた場合、実施したいWeb接客や、必要な機能はどのように考えたら良いでしょうか? 例えば、次のようなケースが考えられます。
課題(いま抱えている課題) | 解決策(どんな接客をしたいのか) | 必要な機能 |
---|---|---|
女性ユーザーのCVRが低い | 女性に合わせた情報提供をする | ・性別でユーザーをセグメントする機能 |
クーポンの販促コストがかさんでいる | 必要なユーザーにだけクーポンを提示して、コストを抑える | ・AIが自動でセグメントする機能 |
クーポン以外でお店の魅力を伝える | ・単発のポップアップ表示ではなく、チャットのような連続性のあるポップアップ機能 ・チャット機能 | |
新規顧客のトップページからの直帰率が高い | コンテンツのABテストをユーザーごとに行う | ・コンテンツを差し替えるABテストの機能 |
同一ページでも流入元によってCVRの差がある | 流入元に応じてコンテンツを出し分ける | ・流入元でユーザーをセグメントする機能 |
会員向けサービスがあるが利用率が低い | 会員に特化したクローズドな接客を行う | ・会員情報との連携機能(別料金の場合もあるので確認が必要) |
CRM施策が十分できていない | 再来訪を促すプッシュ型接客を行う | ・メール、SNS、ブラウザ通知など、再来訪を促す外部ツールとの連携機能 |
多くのEC事業者がコンバージョン率の向上に向けて、ランディングページやエントリーフォームの最適化など、サイトデザインの改善に取り組んでいると思いますが、Web接客ツールの中には、その段階から活用できるものもあります。また、CRM強化に活用できるツールもあります。
どんな機能が必要なのかを知るには、まずはユーザーを知ること
ペルソナやカスタマージャーニーマップの作成やユーザーテストを行い、ユーザーを理解し、ユーザー視点に立って課題を洗い出すことから始めるのが成功の鍵です。そうすれば、「どのような接客をすべきか」「どのような機能が必要か」について、さまざまなアイデアが出てくると思います。
複雑に考える必要はありません。まずはユーザーの行動、悩み、関心ごとなど、ユーザーを深く知ることです。ユーザーの理解の手法については、下記の記事に詳しく書かれています。
- 売上アップに直結する“本気”のユーザー理解。「わかってるつもり」から卒業する方法
https://netshop.impress.co.jp/node/4819
「導入数が多いから」「評判がいいから」「安いから」といった理由で導入してしまうと、今のサイトの課題に対して、解決策を持たないツールを選んでしまう可能性があります。「どのような機能が欲しいのか?」「なぜその機能が必要なのか?」を確認した上で導入を検討しましょう。
② 導入後の運用体制の構築
〜Web接客ツールは導入後の運用で成否が分かれる
2つ目の選定基準は「ツール導入後の運用体制」です。そもそもWeb接客ツールは、導入すれば直ちに成果が上がるというものではありません。じっくりと時間をかけてPDCAを回し続け、成果を積み重ねていくものです。
また、1つの接客シナリオが成功したからといって、それだけでずっと成功し続けられるというものではありません。時代の変化や消費者マインドの変化などを見逃さず、変化に応じてシナリオに手を入れ続けることも大切です。
Web接客ツールは、接客の半自動化はしてくれますが、手放しで運用できるものではありません。成果を上げるためには、一定のWebスキル・リソースが必要です。
- 分析 (データ解析、ユーザー分析などから課題を洗い出す)
- 企画 (分析結果からアクションを考え実行する)
- デザイン (接客の内容によってはデザイン制作が必要)
- コーディング (接客の内容によってはコーディングも必要)
- ツール運用 (それぞれのツールの仕組み・機能を理解して、設定を行う)
- 開発 (自社サイトへのタグの埋め込み、接客内容によっては、JavaScriptのカスタマイズなども必要)
上記のようなWebスキルやリソースを社内で準備することが難しい場合は、運用サポートがきちんと付いているベンダーを選ぶとか、AIが搭載されているツールを選ぶといったことも検討すると良いでしょう。
ちなみに、導入時にはサポートがあるのに、運用フェーズに入るとサポートが少なくなるというケースもありますので注意が必要です。ツールを選定する際は、導入後のサポート面をしっかりとヒアリングすることをおすすめします。運用サポートをしてくれる別のサービスを利用する方法もあります。いずれにしてもしっかりとPDCAを回せる体制を構築しましょう。
著者情報
EC運用支援サービスのパイオニアとして、日本および中国でeコマースサイトの運営代行、コンサルティングサービスを13年以上展開。
メーカーや大手小売りを中心に、サイト運用に必要なサービス、売上向上に向けたトータルな施策提案をワンストップで提供しています。
現在はペルソナ設計、ユーザーテスト、売上/アクセス分析など定量・定性データ分析部門を強化。そこから導き出される、サイトの課題とターゲットの明確化により、中長期にわたる顧客育成と売上向上を目指すサービスを提供。
「お買い物」を「科学」することで、再現性を持った「売る」技術を蓄積しており、現在日本、中国においてパートナー様にサービスを提供しています。
この「売る」という力、ノウハウは今後ASEANを始め、世界中にサービス提供していきたいと考えています。