EC通販における支払い方法では、クレジットカード、代引きに加えて、「後払い」があった方が良い。一般的にクレジットカード、代引きしか支払い方法がないところに「後払い」を加えると、20%ほど受注が増加する傾向がある。ここでは「後払い」について解説しておこう。
※3月16日 17:35 NP後払いの情報を修正・更新いたしました
後払いのニーズは想像以上に多い
下のグラフは、後払い決済を導入したEC事業者の出荷件数の推移を示している。それまで低迷していた出荷件数が、後払いを導入した2019年2月以降伸び始め、6月には全体で140%の成長となった。後払いを選択する比率は約34%であり、成長分の多くが後払いの顧客であったことがわかる。
このケースは後払い決済の導入後、キャンペーンとして後払いを選択するとお得になるプランを打ち出したためここまでの伸びとなったが、スクロール360の物流クライアントの平均では120%の成長が実現している。
支払い方法として後払いを追加するだけで、なぜここまで売上が増えるのか。理由として考えられるのは次のような点だ。
そもそも、高校生や専業主婦などクレジットカードを持っていない顧客が一定数いる。また、セキュリティへの不安からクレジットカードをネットで使いたくない。代引きは配達時に家にいなければならず使いにくい。「商品を実際に見て納得してから支払いたい」といった顧客もいる。
後払い決済のニーズは想像以上に多い ことを理解しておくべきである。
「後払い」は審査スピードと貸倒率が重要
現在、EC通販向けに後払い決済サービスを提供する企業は9社ほどある。基本的なサービスはほぼ同じだが、EC事業者の視点で重要なのは、審査スピードと貸倒率(かしだおれりつ)である。
審査スピードが速ければ、顧客にとってはそれだけ審査結果が早くわかる。ネット利用者は時間(速い遅い)の感覚が鋭い傾向があり、「後払い」についても同じことが言える。審査スピードの速さは、顧客体験の向上につながるはずだ。
もう1つは、貸倒率である。後払いを選んだ顧客が支払い不能となった場合、「貸倒れ」サービスを提供する企業が代金を負担し、EC事業者には購入代金の全額が支払われる。しかし、貸倒率が高ければ、それは利用料に跳ね返る。貸倒率が低ければ利用料がその分低くなるのである。
こうした点から紹介したいのが、「後払い.com」である。2013年、スクロール360は「後払い.com」を運営する株式会社キャッチボール(以下、CB社)をM&Aした。物流代行を得意とするスクロール360と「後払い.com」が合体することで、EC事業者にシナジー効果を提供することが目的だ。CB社は当時、ベンチャーの独立系企業で、資金力、信用力、システム力がそれほど強くなく、スクロールグループに入ることは双方にとって良い組み合わせと言えた。
そもそもスクロールでは、60年以上前からカタログ販売の支払い方法として後払いを導入しており、後払い審査のノウハウとデータを豊富に持っている。例えば、一度貸し倒れになったユーザーは、次に注文するとき、住所と名前を変更して別人に成りすます傾向がある。そうしたノウハウをもとに、独自の審査システムを自社で開発している。
このシステムをCB社に導入することで、CB社の審査能力は大幅に強化され、他社より審査のスピードが速いと言われるようになった。また、貸倒率が低下することで、料金も業界最安値となっている。
後払い.com | NP後払い | GMO | ||||||
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決済手数料 | 月額固定費 | 決済手数料 | 月額固定費 | 決済手数料 | 月額固定費 | |||
料金 | Aプラン | 4.8% | 0円 | 5.0% | 0円 | 4.7% | 0円 | |
Bプラン | 4.2% | 4,500円 | 4.4% | 5,000円 | 4.2% | 4,500円 | ||
Cプラン | 3.5% | 18,000円 | 3.6% | 20,000円 | 3.4% | 18,000円 | ||
Dプラン | 2.8% | 45,000円 | 2.9% | 48,000円 | 2.7% | 45,000円 | ||
請求手数料 | はがき | 169円 | ─ | 150円 | ||||
封書 | ─ | 190円 | 180円 | |||||
同梱 | 85円 | 85円 | 89円 | |||||
決済上限額(税別) | なし | 50,000円(※1) | 50,000円(※1) | |||||
サービス内容 | 支払い可能窓口 | コンビニ | ○ | ○ | ○ | |||
銀行ATM | ○ | ○ | ○ | |||||
郵便局 | ○ | ○ | ○ | |||||
サポート対応 | 時間 | 9:00〜18:00 | 9:00〜18:00 | 10:00〜17:00 | ||||
定休日 | 年末年始 | 土日祝 | 土日祝 | |||||
リアルタイム与信機能 | ○ | ○ | ○ | |||||
注文キャンセル手数料 | 無料 | 有料(※2) | 有料(※2) | |||||
請求期限 | 14日間 | 14日間 | 実質13日間(※3) |
後払い用の振込用紙についても、スクロール360の物流センターで印字し、商品と同梱することで郵送コストを抑えている。振込用紙を郵便で別送すると、商品の到着時に「後払いで頼んだのに、なぜ振込用紙が入っていないのか?」というクレームが入る。商品に同梱する方がクレームは少ない。
この記事は『 EC通販で勝つBPO活用術』(ダイヤモンド社刊)の一部を編集し、公開しているものです。
著者情報
高山 隆司 株式会社スクロール360 常務取締役
1981年株式会社スクロール(旧社名ムトウ)に入社後、新規通販事業の立上げ、販売企画、INET戦略策定など42年にわたり通販の実戦を経験。2008年、他社のネット通販事業をサポートするスクロール360設立に参画、以後200社を超えるネット通販企業の立ち上げ、コンサル、物流受託を統括。著書に『ネット通販は物流が決め手!』『EC通販で勝つBPO活用術』『通販まるごとソリューション』(いずれもダイヤモンド社)がある。
著者情報
佐藤 俊幸 株式会社もしも 取締役
2007年もしも入社後、ネットショップ運営コンサルタントとして、全国の300以上のネットショップに対して集客を中心に支援。2014年よりアフィリエイト広告を中心としたマーケティング事業を統括。2018年に、もしもはスクロールグループに入り、以後、グループ一体となって通販支援に従事。