矢野経済研究所が発表した物流15業種総市場に関する調査結果によると、2025年度の物流15業種総市場規模(15業種各市場の積み上げ、一部重複を含む、事業者売上高ベース)は前年度比0.5%増の24兆7650億円と予測した。
2024年度の物流15業種総市場規模は同5.1%増の24兆6405億円、2023年度は同3.8%減の23兆4495億円だったと推計している。
対象の物流業種は、特別積合せ貨物運送事業、宅配便事業(国内)、国際宅配便事業、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業、海運(外航+内航)事業、一般港湾運送事業、航空貨物輸送事業、フォワーディング事業、鉄道貨物輸送事業、鉄道利用貨物運送事業、軽貨物輸送事業、普通倉庫事業、冷蔵倉庫事業(冷凍倉庫含む)、引越事業、その他事業の15業種。

2025年度の市場について
物流業種別に見ると、海運や一般港湾運送、特別積合せ貨物運送、引越の4業種で前年度比マイナス成長になる見込み。一方、前年度比でプラス成長になる業種は、3PL、普通倉庫、冷蔵倉庫、航空貨物輸送、鉄道利用貨物運送、鉄道貨物輸送、軽貨物輸送の7業種とした。
海運と一般港湾運送は、米国関税の引き上げの影響による輸出貨物量の低迷を加味。3PLや普通倉庫などは、米国関税の引き上げの影響は不確定な要素が多く加味していないとした。
3PLは、国内外に渡って荷主企業のサプライチェーン全体を支える複合的な物流サービスを提供しており、着実に市場規模を拡大していく見通しとした。
2024年度の市場について
国際物流は海運や航空貨物輸送などの業種で前年度に比べて荷動きの回復が見込まれたと同時に、中国発欧州・米国向け貨物輸送の需要が増加。日本も含めたアジア発欧州・米国向けの運賃市況が再び上昇した。円安による為替の影響もあり、運賃の上昇による海運市場規模拡大が続いたとしている。国内物流では2023年度に続き、ドライバー人材確保のために人件費の上昇が加速。一方、荷主企業の理解が進み、これまで以上に輸送運賃へ転嫁しやすい環境となり、トラック運送事業など陸運を中心に物流市場規模を押し上げる要因になった。ただし、食料品などの価格値上げに対し、消費活動は足踏み状態が続いたほか、円安に伴う輸入貨物量の減少も続いたと想定される。そのため、国際物流も国内物流も物量の増加要因は少なく、運賃や料金など価格上昇が主な要因となり、2024年度の物流15業種総市場の規模が拡大したと見込んでいる。
注目トピックに物流統括管理者(CLO)
物流統括管理者(CLO)の選任をあげている。物流の持続的な成長を図るため、2024年5月に「物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)」が改正され、荷主企業および物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課せられることになった。
2026年度から一定規模以上の特定事業者に対し、物流の改善に寄与することを目的に、中長期的な計画の策定や定期的な報告を義務付け。これらの義務の一環として、特定荷主および特定連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)には、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任を定めた。
矢野経済は物流統括管理者(CLO)について、物流事業者のために設置するのではなく、荷主企業の自社戦略のために設置することが望ましいと指摘。物流事業者のための物流効率化ではなく、自社戦略のための効率化を進めていくことをめざすべきとしている。
調査概要
- 調査期間:2025年4~6月
- 調査対象:国内有力物流事業者など
- 調査方法:矢野経済研究所専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話アンケート調査、ならびに文献調査併用
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