EC事業が年商20億を超えた規模でよく直面するのが「伸び悩み」。そこから年商30億円を突破するためのECツール連携設計(広告・CRM・商品・在庫編)について、「ネットショップ担当者フォーラム」編集顧問兼ネッ担お悩み相談室チーフコンシェルジュであるインフォマークス代表の天井 秀和氏に聞いた。記事内には各連載に関するチェックシートを用意しているので、ぜひ活用してほしい。
「伸び悩み」、その理由とは?
EC業界において、一定の規模に達した企業がよく直面する「伸び悩み」。その典型として、次のような課題などがあげられる。
- 新規顧客は増えているのにLTVが伸びない
- 商品数は増えているのに在庫回転率が悪化する
- 自社ECを強化したいのにモール依存から抜け出せない
こうした停滞を招く背景には、個別の施策そのものに不備があるわけではない。むしろ、導入しているツールや日々の運用が事業全体の中で連動していない「分断」が潜んでいることが少なくない。
天井氏にも、年商20億円台後半の規模を持つ事業者から、似たような相談が相次いだという。
広告投資を増やしても、成果に直結しない
その相談は、広告投資が必ずしも売り上げに直結しないという内容。具体的には、広告費を前年比で20%近く増やして新規顧客数が10〜15%ほど伸びているにもかかわらず、
- ケース1 :全体売上は数%の増加にとどまっている。そればかりか、在庫の回転率は悪化し、粗利ベースの収益性も低下するという事態に陥っている。
- ケース2 :新規顧客は獲得できている一方で、定期購入の継続率が2〜3%低下するといった相談も寄せられている。
このように、集客コストを積み増しても想定したほどの成果が得られず、効率が悪化しているのが年商30億円を目前にしたEC事業者の現場でよくあげられる課題である。
このケースについて、CPA(顧客獲得単価)は許容範囲内にあり、ROAS(広告の費用対効果)も前年と比べて、極端に悪いわけではない。決して広告そのものが効いていないというわけではなく、個々の施策は機能している。
商品力やCRMの運用にも致命的な欠陥は見当たらず、やっていることに問題はないはずなのに、現場には「施策が前に進んでいる感じがしない」という停滞感、踊り場感が共通していた。(天井氏)
その原因は、新規顧客が獲得できている一方で、F2転換(2回目以降の購入)につながらなかったり、再購入までの期間が想定以上に伸びたりしている点にある。
結果として、新規顧客数は増加しているにもかかわらず、その後の売り上げが積み上がっていかないという状態に陥る。
停滞感の本質
EC事業の各部門へのヒアリング結果を統合すると、この停滞感の本質は「部分最適の積み重ねが全体最適に繋がっていない」という状態が浮かび上がってくる。
現場では、広告担当者からすれば「新規獲得はできている」が、CRM担当者から見ると「リピート購入が弱い」となる。一方で、商品担当者は「在庫が回らない」となり、EC事業部長は「最終的な売上成長に結びついていない」と主張する。
特筆すべきは、それぞれの主張がデータに基づいた事実であり、各部門が役割を果たしているにもかかわらず、組織全体としての方針が噛み合っていないことである。
問題は「施策間の関係性」
このような停滞した局面では、つい広告クリエイティブの改善やメルマガの配信頻度の増加といった、個別施策のPDCAに目を向けがちである。しかし多くの場合、広告もCRMもそれぞれ単体としては十分に機能している。
問題は「施策間の関係性」にある。具体的には、広告を通じて獲得した顧客が、その流入経路やカテゴリ、在庫状況とは無関係に、一律のCRMシナリオへと流されてしまうといった「施策の分断」である。
たtpえば、天井氏が以前EC支援に携わった健康食品ECでも、SNS広告経由の顧客と検索広告から流入した顧客に、全く同じステップメールを送ってしまうことで、再購入に繋がる最適なタイミングや訴求を逃しているケースがあったという。
年商30億円の壁で直面する多くは「構造的な問題」
「年商30億円の壁」にはさまざまな背景があるので、これは1つの切り口でしかないが、「ここを改善すれば突破できる」といったシンプルな課題であることは少ない。30億円手前で多くのEC事業者が直面するのは、「構造的な問題」がほとんど。(天井氏)
広告を通じて新規顧客を獲得し続けているにもかかわらず、その先が分断されていては、結果として事業全体で「育たない顧客」ばかりが増えていく。個々の施策は稼働しているはずなのに、それが最終的な売り上げの積み上げには結びつかない。むしろ、広告、CRM、商品管理といった各部門の活動がバラバラに機能し、全体としての整合性を失っている「構造的な問題」であることが多い。
どれほど新規顧客を呼び込んでも、その後の動線やフォローアップが顧客の性質と噛み合っていなければ、成長は踊り場で足踏みを続けることになる。停滞を打ち破るには、個別のPDCAを回す段階を超え、施策間の分断を解消して事業全体の流れを再構築する必要がある。
自社の状況を確認して、「どの領域で分断が起きているのか」を整理することが、次の成長フェーズへ進むための第一歩となる 。(天井氏)
「年商30億円の壁」の前で売り上げの伸び悩みを感じている場合、まずは日々の運用の中で、次のような状況が起きていないかを確認してみてほしい。
年商30億円を達成するためのECツール連携設計チェックシートをご用意しているので、ぜひ多くの企業さんに活用してほしい。


