生成AIが消費者の購買意思決定をサポートする「エージェンティック・コマース」という概念が広がっている。Criteoがこのほど発表した見解によると、この新たな潮流は既存の買い物体験を「置き換えるもの」ではなく、利便性を高めるための「追加レイヤー」として機能していくという。
近い将来、AIが人間を介さず自律的にすべての購買を完結させる世界がすぐに訪れるわけではない。まずはリサーチや商品比較、決済の効率化などをAIが担い、最終的な意思決定は人間が行うという形で、段階的に進化していくとCriteoは予測している。
1. 既存チャネルと「併存」する新たな選択肢
Criteoは、エージェンティック・コマースを「新チャネル」ではなく、既存チャネルの上に重なる「上乗せレイヤー」と見ている。かつてECが普及しても実店舗が消えなかったように、AIエージェントも従来の購買行動を一掃するのではなく、共存していく可能性が高い。特に「時間短縮」や「最適な価格の発見」といった場面でAIが価値を発揮し、EC市場全体の拡大に寄与するとしている。
2. 分散する検索行動の受け皿に
検索行動が多様化する中、LLM(大規模言語モデル)は「プロンプト起点の探索レイヤー」として機能。米国の消費者の40%がすでにエージェント型のショッピングアシスタントを利用している一方で、その多くは検索エンジンやSNSも併用している。消費者が存在するあらゆる接点で商品が見つかる状態(商品情報の分散配信)を整えることが、これまで以上に重要になるとする。
3. 「高品質なコマースデータ」が体験の質を決める
AIによるレコメンドの精度を左右するのは、在庫・価格・属性などの「構造化データ」の質。現在、「ChatGPT」によるショッピング検索の精度は約64%にとどまっているという調査もあり、リンク切れや欠品情報はブランドへの信頼を損なうリスクとなる。質の高いデータをリアルタイムでAIプラットフォームと連携できるインフラ構築が重要だ。
4. リテールメディアのファネルを広げる効果
「LLMがリテールメディアを侵食する」という懸念に対し、Criteoは「購買ファネルを広げる入り口になる」と捉えている。AmazonのAIアシスタント「Rufus」の活用セッションで購入増加率が大幅に向上した事例もあり、AIを通じたパーソナライズな提案はUX基準を引き上げる。小売事業者は自社のチャットボットや、外部LLM上でのスポンサー枠を通じて、商品の露出をコントロールする新たな機会を得ることになる。
5. 収益化の軸は「会話の流れに沿った広告」
LLMプラットフォームの持続的な収益モデルとして、Criteoは「広告」が最も拡張性が高いと見ている。AIとの会話の流れを阻害せず、意思決定を支援する情報として提示される広告は、ノイズではなく有益なアドバイスとしてユーザーに受け入れられる可能性を秘めている。小売事業者は、自社データの「所有」と外部との「連携」のバランスを取りながら、この分散化する市場での影響力を維持していく必要がある。
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