AIが日々の購買行動に与える影響が急速に強まっている。Criteoが発表した消費者インサイトレポート「コマースとAIに関するトレンドレポート2026」によると、大規模言語モデル(LLM)などAI経由でECサイトへ流入したユーザーは、他の集客チャネルと比較して1.5倍ものコンバージョン率(CVR)を示したという。今回の調査は日本を含む世界6か国・6300人以上の消費者を対象に実施した。
レポートでは、AIアシスタントの活用が商品の探索や比較といった初期段階で大きく広がっている一方、最終的な購入の意思決定は依然として消費者が自ら行っている実態が明らかになった。信頼できるブランドや使い慣れた小売事業者を基点に買い物が行われており、AIは購買そのものを代行する存在ではなく、消費者の意思決定を前倒し・高度化させる「発見と検討の起点」として機能しつつあるようだ。
商品発見のチャネルは多様化するも、決済は既存ECが中心に
Criteoの分析によると、ユーザーが商品を発見・探索するアプローチは、AI、ECサイト内検索、SNS、動画プラットフォーム、専用アプリなど、複数のチャネルに分散し多様化が進んでいる。その一方で、AIが直接決済までを完結させる段階には至っておらず、あくまでも購入に至る検討プロセスをスムーズに進めるためのサポート役として寄与しているという。
実際に、普段の買い物で何らかの形でAIを活用している消費者は96%に達しているものの、最終的な購入までの過程では複数のチャネルを併用するのが一般的。AIの具体的な用途としては「商品情報の収集や価格比較」が中心となっており、利用割合はグローバルで47%、日本国内でも40%に達した。
プライバシーの懸念を上回る「情報の信頼性」への要求
AI活用の広がりと並行して、消費者が抱く新たな不安や警戒感も浮き彫りになった。個人情報や位置情報の共有に対して慎重な姿勢を示す層はグローバルで57%、日本は67%に上る。さらにクレジットカードなどの支払い情報の共有についても、グローバル・日本ともに55%が慎重な態度を見せている。
特に今回の調査で注目すべきは、発信される情報の信頼性に対する意識の高さ。「偽情報や偏った情報への懸念」を感じている割合はグローバルで52%、日本で61%に達し、プライバシーへの懸念(グローバル46%、日本37%)を大きく上回る結果となった。AIが消費者の購買行動に深く入り込むからこそ、情報の正確性やAIによる推薦の妥当性といった「売り手やプラットフォームへの信頼」がより厳しく問われるようになっている。
極端な「最適化」よりも、想定外の出会いを生む「発見性」を重視
Criteoは、AI時代におけるユーザー向けパーソナライズ(個別最適化)の在り方にも変化が起きていると指摘する。個人の好みに合わせた提案と、新しい商品に出会える「発見性」の両立を望む層が最も多く(グローバルで46%、日本で44%)、一方でユーザーの行動履歴のみに完全に最適化された体験だけを求める層は少数派(グローバルで16%、日本で11%)にとどまった。
また、ユーザー自身が入力した検索条件に完全一致しない商品であっても、関連性のある興味深い提案であれば受け入れたいと考える消費者はグローバルで56%、日本で52%を占めている。これからのECサイトにおけるAI活用の価値は、選択肢を絞り込んで最適化し尽くすことではなく、ユーザーにとって「予期せぬお気に入りに出会える余白」を残した提案設計を行うことにありそうだ。
キーワード検索から「対話・相談型」のコミュニケーションへシフト
消費者の検索行動自体も変わりつつある。AIは単なるテキスト検索の代替ツールではなく、自らのニーズや考えを整理し、選択肢を広げるための“相談相手”として利用されるケースが増えている。
具体的な検索手段としては、画像検索に快適さを感じる割合がグローバルで44%、日本で48%と高い水準を示した一方で、音声検索の活用はグローバルで26%、日本は18%とやや慎重な傾向が見られる。また、AIを搭載したスタイリングアシスタントなどのインタラクティブな機能への関心は、グローバル・日本ともに52%と半数を超えた。
LLM経由のユーザーはCVR1.5倍、さらに7割超が商品ページへ直接着地
EC事業者側の視点に立つと、今後は「購買前のユーザー体験」をいかに設計するかが成否を分ける重要課題となる。Criteoが米国を拠点とする500社未満のマスタントを対象に1〜2月に実施したインバウンドトラフィックの分析によると、LLM経由で流入するユーザーはファネルの上位(認知や興味段階)での接触がメインであるにもかかわらず、最終的なCVRは他チャネルの1.5倍という高いパフォーマンスを叩き出している。
さらに驚くべきことに、これらのAI経由のユーザーの70%以上が、トップページなどを経由せず個別の「商品ページ」へと直接ランディングしていることが判明した。あわせて、音声検索や画像検索を利用したことで購買意欲が高まったと回答した消費者も59%に達している。
Criteoはこれらの結果を踏まえ、今後の企業やブランドにとって、人間の消費者に選ばれるためのマーケティングだけでなく、AI検索エンジンやLLMに対して自社の商品情報が正しく理解され、適切にレコメンドされる状態を整える「AI最適化」の視点が一層重要になると結論付けている。
調査概要
- 調査実施期間 :2026年1月1日~2月28日
- 調査対象 :米国、英国、フランス、ドイツ、日本、韓国の6か国を対象に、計6,379人の消費者(日本国内における回答者数は1,074人)
- 調査方法 :買い物客を対象にしたCriteoのアンケート調査、およびインバウンド・トラフィック・ソースのデータ分析
著者情報
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