元ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)の“中の人”で、通販企業向けのセミナーや教育コンテンツ企画していた立場から、アフィリエイトの活用法をお伝えします。まずは「アフィリエイトとは?」というお話から。
アフィリエイトは効果が出ない?
ASPに所属していた当時から、通販企業の方々とお会いすると、
「アフィリエイトは効果が出ないから撤退した」
「利用しているけどあまり効果が出ていない」
といったお話をお聞きします。
私は元ASPの中の人ではありますが、インターネットを活用して商品を売ろうと思った時に、最初にアフィリエイト広告を選択するのは、あまりお勧めしていません。
その理由を説明する前に、アフィリエイトについておさらいしておきましょう。
そもそも「アフィリエイト」とは
アフィリエイトでは、広告主、アフィリエイター、そしてASPという3者が登場します。まずはその関係性を理解しましょう。
広告主 ……アフィリエイトを利用し、プロモーションを行います。「EC」「マーチャント」などとも呼ばれますが、ここでは「広告主」とします。
アフィリエイター ……ホームページやブログなどの媒体を持ち、広告主が提供する広告素材を利用します。法人だけでなく個人も含め、さまざまなサイトがASPに登録されています。「媒体」「パブリッシャー」「AS会員」など、ASP独自の呼び方もありますが、ここでは「アフィリエイター」とします。
ASP ……成果報酬型広告を配信しているアフィリエイト・サービスプロバイダーです。「ASP」と略されています。
アフィリエイトとは、ホームページやブログ、メールマガジンなどの媒体を持っているサイト運営者であるアフィリエイターが、広告主の商品やサービスを自分の媒体を使って紹介します。その媒体を見たユーザーが、掲載された広告主の広告素材をクリックして、ASPを経由して広告主のサイトへ誘導されます。
ここまでは一般的な広告と変わりありませんが、アフィリエイトの場合は一般的な広告とは違い、「クリック報酬」を設定していない限り、ユーザーが自社サイトに来ただけではアフィリエイターへの報酬は発生しません。ユーザーが商品購入や資料請求など、広告主が設定した成果となる行動をして初めて報酬が発生するのです。
既存の広告とアフィリエイトの違い
一般の広告は、媒体側が掲載条件を決定 します。広告主はそれらの条件を見比べて、選択し、媒体側の条件に合致すれば広告を掲載することができます。
しかし、アフィリエイトでは掲載条件を決めるのは広告主です。掲載条件とは、「成果報酬10%」「再訪問期間は30日」など、成果報酬を受け取るためのルールです。条件を見たアフィリエイター側から、広告主へ掲載の申請を行います。広告主が掲載してもよいと判断すれば「提携関係」となり、アフィリエイターは広告を掲載することができます。
この提携関係というのは掲載を約束するものではありません。アフィリエイターは、自ら掲載したいと思ったタイミングで広告を掲載していきます。
既存の広告 | アフィリエイト | |
---|---|---|
広告掲載の選択 | 広告主が決定 | アフィリエイターが決定 |
広告の価格決定 | 媒体が決定 | 広告主が決定 |
報酬が発生する タイミング | 広告を掲載する時 | 成果が発生した時 |
つまり、掲載費用を支払えば掲載してもらえるものではなく、掲載の意思決定は、あくまでアフィリエイターにあるということを理解しておく必要があるのです。
アフィリエイターのモチベーションを理解し、維持するべし
アフィリエイトは「成果が発生した時だけ支払いをすれば良い」という、費用対効果の高い部分だけが注目されがちです。
広告主から見ると「たくさん送客してもらっても、売れなければ払わなくても良い」とも考えられます。広告主から見ればこれほど都合の良いものはありません。
ですが、アフィリエイターの立場に立つと、どんなに送客しても成約につながらなければ1円にもならないわけですから、「紹介して、送客だけしてくれればいい」といった対応をしていると、積極的に紹介してもらうことは難しいと言えるでしょう。
アフィリエイターは稼ぎたくて活動しています。自分のサイトやブログに広告主の紹介記事を書き、バナーやテキストの広告を掲載しているのは、成果報酬が大きなモチベーションになっているからです。
この、アフィリエイターのモチベーションを理解し、維持していくことが、アフィリエイトで成功するために最も必要な活動となります。
アフィリエイターへの積極的な情報提供が不可欠
冒頭にお話ししたように、事業を開始して最初の集客施策としてアフィリエイトをおすすめしない理由もこのあたりにあります。
広告の中では比較的元手を掛けずに始められるので、費用対効果の高いうまみだけを望んでスタートされるケースが多く、実際にやってみると予想以上に運用工数がかかり「負担が大きい!」と感じてしまうからです。
ですので、まずはリスティングなどを利用して、見込み顧客がどんなキーワードで興味を持ち、どんなきっかけで商品を買うのかを理解し、そこからさらに2割、売上を伸ばすためにアフィリエイトを選択するぐらいがベストではないかと思います。
なぜなら、有力なアフィリエイターとコミュニケーションをとり始めると、「どの時期に、どの時間帯によく商品が購入されますか?」「他社との明確な違いは何ですか?」「お客さんがあなたの商品を買う理由はなんですか?」などなど、代理店や販社の方々と同様の質問をされるようになるからです。
アフィリエイターはこれらの情報を得て、判断して、自身のサイトやブログに親和性の高い商品を紹介していきます。つまり、広告主側からの情報発信によって掲載に結びつくのです。
もちろん、他の媒体にも紹介されているような知名度の高い商品は、アフィリエイターとのコミュニケーションに大きな工数をかけなくても成功する場合もあります。
ですが、基本的に売れない商品を売るのではなく、売りやすい、売れている商品をより多く売るのがアフィリエイターの仕事なので、まずは広告主側が「どうやったら売れるのか」を、積極的に情報提供する必要があります。
ここが、アフィリエイトの難しいところであり、面白いところでもあります。
まずはアフィリエイターに選ばれなければ始まらない
アフィリエイトでは、広告主は選ばれる立場です。
アフィリエイトは既存の広告と違い、媒体を持つアフィリエイターとのコミュニケーションを通じて、成果を上げていく仕組みです。広告主が「広告を掲載してほしい」と思っても、アフィリエイターが掲載したいと思わなければ、広告を掲載してもらえません。アフィリエイターに掲載してもらうため、選んでもらうための活動をしなくてはならないのです。
著者情報
鈴木 珠世すずきたまよ事務所
2004年よりギフトメーカーのWebショップ担当を経験。「モノを売る楽しさ」「アフィリエイトの楽しさ 」に目覚め、2008年よりファンコミュニケーションズ、そしてリンクシェア・ジャパンにて、ネットショップ運営者やアフィリエイターに向けた教育・啓蒙活動に従事。その後、代理店でのコンサルティングを経て、2016年よりフリー。現在はボーディー有限会社でアフィリエイトの社内運用支援を行う。
日本アフィリエイト協議会によるアフィリエイト業界関係者が選ぶ「アフィリエイト業界Most Valuable Player(MVP)」2012、2013、2014の3年連続受賞。共著にて「成功するネットショップ 集客と運営の教科書」を出版。