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専門家解説

物流代行会社・物流サービス
基礎から失敗しない選び方のポイント

株式会社スクロール360 常務取締役 高山 隆司

1981年株式会社スクロール(旧社名ムトウ)に入社後、新規通販事業の立上げ、販売企画、INET戦略策定など42年にわたり通販の実戦を経験。2008年、他社のネット通販事業をサポートするスクロール360設立に参画、以後200社を超えるネット通販企業の立ち上げ、コンサル、物流受託を統括。著書に「ネット通販は物流が決め手!」「EC通販で勝つBPO活用術」「通販まるごとソリューション」(いずれもダイヤモンド社)がある。

物流業務をアウトソーシングするメリット

  1. 拡張性の確保事業の拡大に応じて、アウトソーシング先の物流代行企業が、商品を保管するためのスペースを確保します。自社で出荷をしている場合、売り上げが伸びているものの、スペースに限りがあるため在庫を増やせない状況に陥ることがあります。物流倉庫をアウトソーシングすることにより、大きいスペースを多くの荷主企業と共有できるので、効率的にスペースを使うことができ、コストメリットも享受することができます。 
  2. 物流の波動を吸収物販では、繁忙期、閑散期といった物流の波動が発生することがあります。物流業務をアウトソーシングすることで、物流の波動を吸収することができます。物流代行会社はさまざまな企業の業務を多くのスタッフでコントロールしますので、物流業務およびそれに携わるスタッフを最適化して、波動を吸収します。 
  3. ECサイト運営のコア業務への集中物流の専門家に業務をアウトソーシングすることで、コア業務(戦略立案、MD、マーケティングなど)に集中することができます。ECビジネスで重要なことは、商品を企画し、お客さまに知ってもらい、良さを伝えて、販売することです。そのために、戦略の立案・設計、多店舗化、MDの強化などにリソース、資金を投資することが重要になります。結果的に、スタッフのモチベーション向上といった効果も期待することができます。 
  4. 固定費の変動化によるコストメリット自社で物流業務を行っていると、人件費、光熱費、賃料、セキュリティといったコストが固定費として計上されます。固定費だったコストを変動費にすることができますので、売上高や物流の量に応じて変動化し、コスト削減につなげることができます。具体的には、物流業務をアウトソーシングすることにより、1坪あたりの発送コスト低減、送料のバルク割引などの恩恵を享受することができます。また、多店舗展開する企業でECモールごとに異なる物流対応を行う場合、外注することによりモールごとの発送業務に対応できます。 
  5. 品質向上自社で物流業務を行う場合、作業が特定のスタッフに属人化するといったことが発生する可能性があります。そのスタッフが休職、退職した場合、品質が低下してしまう恐れがあります。物流業務のアウトソーシングはその道の専門家が業務を担うわけなので、物流業務を平準化することが可能。出荷ミスの低減、配送スピードの向上といったことが期待できます。 
  6. 返品業務の対応昨今、返品対応を消費者とのタッチポイントと捉え、顧客体験(CX)の向上につなげる企業が増えています。また、アパレルなどの商品を扱う場合、返品物を再利用(再販売)することが必要になります。返送対応、ラベルの付け替えなどさまざまな業務が発生しますので、この業務をアウトソーシングすることで、正確でスピーディーな返品対応を行うことができ、最終的には顧客満足度の向上につなげることが期待できます。 
  7. 流通加工への対応化粧品・医薬部外品(一般製造)、化粧品・医薬部外品(包装・表示・保管)、食品加工(菓子製造業)などの免許を取得している物流倉庫であれば、各種の流通加工へ対応することができます。 
  8. 同梱物のコントロールリピート購入の重要性が高まっており、同梱物のコントロールはリピート通販の鍵になります。初めて注文した消費者用の同梱物、F2用の同梱物など、ステータスに応じてパンフレットの同梱を変えるといったオペレーションを正確・スピーディーに行いたい場合、アウトソーシングがお勧めです。 
  9. 海外向け発送海外向けの発送、輸出手続き、輸出用の梱包、書類作成、出荷通知送信など、越境ECにかかわる物流業務をアウトソーシングできます。 

アウトソーシングできる物流業務の内容

「3PL」「物流代行企業」などと称される物流アウトソーシング実施企業に物流業務を委託できる作業内容です。自社の物流機能をその道の専門家にアウトソーシングすることで、上記のようなメリットを享受できます。

アウトソーシングできる業務について(一例)

  • ◎入荷作業
  • ◎出庫作業
  • ◎商品管理
  • ◎出荷作業
  • ◎同梱作業
    • 生地の量り売り
    • アパレルたけつめ
    • 刺繍
    • タグ付け
  • ◎名入れ
  • ◎ささげ
    • 撮影
    • 採寸
    • 原稿(コピーライティング)
    • 画像加工(白抜き、色調整など)
  • ◎流通加工
    • 化粧品・医薬部外品の加工(一般製造)
    • 化粧品・医薬部外品のアソート(包装・表示・保管)
    • 食品加工(菓子製造業)
  • ◎化粧品の加工、アソート
  • ◎輸入化粧品のラベル対応
  • ◎コンテンツデータの掲載
  • ◎在庫管理
  • ◎モールへの在庫データ連携 など

アウトソーシングの料金・費用、見積もりのポイント

物流アウトソーシングに関する一般的な料金体系、それを踏まえた見積もりを取る上でのポイントをまとめています。
  1. 固定費(基本料金)
    • ◎事務管理費用
      • 指示データ通りに出荷する作業費用
      • WMSの使用料金
    • ◎保管費用
      • 坪あたり○円、パレットあたり○円、1体積あたり○円といった算出方法がある       
        ※電気、光熱費は物流代行企業によって異なる。基本的には坪単価に含まれる。
  2. 変動費
    • ◎入庫費用
      • ケース入庫、バラ入庫のどちらか
    • ◎ピッキング費用
      • 1点ピッキング○円
    • ◎梱包費用
      • 1梱包○円+同梱物1枚○円
    • ◎伝票出力費(徴収しない企業もある)
      • 1伝票○円
    • ◎発送費用
      • 配送キャリアが商品を運ぶ費用
    • ◎資材
      • 段ボール、ぷちぷち、ガムテープなど。自社で段ボールを持ち込むなどもできる
  3. 見積もりのポイント物流会社からヒヤリングシートが用意されるため、できるだけ正確に記入しましょう。事実と懸け離れた回答をすると、それだけ見積もりの誤差も大きくなります。いま利用している配送会社はどこの企業で、直接契約なのか3PLのタリフなのか、つつみ隠さず伝えるようにしましょう。そうすると、3PL会社はより正確な見積もりを提出することができます。

初めてのアウトソーシング・物流代行会社の切り替えで押さえておくべきポイント

  1. 初めてアウトソーシングする場合の目安物流業務のアウトソーシングは発送件数1000件/月を目安に考えましょう。1000件/月は20日営業で換算すると1日50件で、スタッフ1人が1日で簡単に発送できる件数の上限と言えます。この数値を超えるとキャパオーバーになるため、月1000件の受注件数を目安としましょう。 また、月1000件よりも少ない場合、発生する物流業務の固定費が割高になってしまい、利益を圧迫してしまいます。 
  2. 初めて物流拠点を移転する際の目安「今の拠点の品質が悪い」「今の拠点の料金が高い」といった理由でアウトソーシング先を変更する場合、「今の拠点よりも安くて品質が良い」という条件で相見積もりを複数社から取りましょう。提案された概算見積もりから2~3社に絞り、その物流代行会社に見学で足を運んでください。その際、現在の物流代行会社で課題となっている点が、移行先として検討している企業ではどのように行っているかという観点で見学してください。

失敗しない物流代行会社の選び方

  1. 物流代行会社を選ぶ上で基本的なことを解説します。 まず業界内で知り合いがいたり、業界の集まりに参加できるようであれば、そこで業界内で評判の良い物流代行会社を聞いたり、検討している物流代行会社のことを聞いてみましょう。
  2. そして、実際に物流現場へ足を運ぶことが重要です。その際、「倉庫内は掃除が行き届いているか否か(5Sができているか否か」「スタッフの覇気があるかないか(挨拶ができているか否か」「システムに強いか否か(システムに強いスタッフがいるか否か)」などをきちんとチェックするようにしましょう。
  3. また、通販ビジネスは大きく「ロングテール系」「リピート系」にわかれます。それぞれの販売方法によって得手不得手があります。その物流代行会社がどのようなビジネスモデルに強いのかを把握することも重要です。

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